私はペーパーの芯
皆さんからご投稿いただいた、
身近にある「おみごと!」を感じられるストーリーを紹介します。
私は今日も早朝から忙しい。くる、くる、くると回転だ。そして、折々に一日中そんなことを繰り返している。時には数回、夜中にそのくる、くるをやらされる。
急ぎの時はくる、くるの回転はせわしい。くぅーる、くぅーるとスローな回転の時もある。そして幾日かが経つと、役目は終わり解放の身となる。そして、細くて真っ白な筒になった私を、この家の主は捨てることもなく、毛筆を持ってきて、その白いボディに文字やら絵などを書き込み、また違った形で蘇らせてくれる。そしてトイレの小高い小窓の棚に立てかけた。
ここは、これまでの私と違い、立っているだけで良い。静かで見晴らしもよく気分も爽やか。私も凛とした姿でじっとたたずんでいる。こんな姿を見て、このトイレに入ってきた人が微笑みかけてくれることもある。時には持ち上げてくれたりもする。うれしい。今までと違った体験で、これはこれで楽しい。今日も香り良いトイレの中で、誰かを待っている。
「役目は終わったのに、まだ役に立ちたいとペーパーの心(しん)」
芯には、「分相応に働いているのは楽しい」「雑草という名の草はない」「この世にどうでも良いというものは一つもない」などと記されていた。
(三重県・ピーチクパー子85歳)